Wave Arts Master Restoration Suite

This article is written in Japanese.

去年の年末にいろいろ購入したものの紹介の第4段です。

今回はノイズリダクションのプラグインです。
Wave Arts 社のプラグインは Power Suite 5 で、ほぼ全ての曲で最終段に FinalPlug を挿して使っていました。
Wave Arts Power Suite を知ったのは、あるプロデューサー兼アレンジャーの方がブログで紹介していたのがきっかけでした。とても軽く、音がいいとのことでした。
実際使った感想はとても素直な音で、動作に確実な信頼性があったということです。
そして Logic のプラグインとはそれぞれ明確に違っていて、Logic を補う常時使用するのにいいプラグインだと判断しました。

去年の年末、PET Bottling(日本語English)のサウンドのノイズを減らして、よりプロフェッショナルな使用に耐えるものにしようというプロジェクトを開始しました。
どうしてもマイク録音した小さい音を大きくするなど、大胆に音量を大きくしたものをサンプルとして使用する必要があったので、当時録音した音は周りの環境音などが取り除き切れませんでした。
PET Bottling でサンプリングした音を再度録音するのは困難です。同じ音を録音することは不可能だからです。
ですから、DAW のプラグインを使ってノイズを抑えるというのが現実的でした。

Logic 付属のプラグインは全く求めた結果を達成できなかったので、他を探す必要がありました。
いくつか使用するプラグインの候補を挙げて、最終的に現在では有名なワンノブでノイズを除去するプラグインと Wave Arts Master Restoration Suite の2つの候補が残りました。

当初はワンノブで操作し、簡単にノイズを除去できるということから、そちらを使ってほぼ最終段階まで行きました。
ところが PET Bottling で使うサンプルを得るために次々とバウンスしていくと気付いたのです。今回使う短い音をループさせたりして繰り返し聴いていると、毎回出音が違うのです。
よくあるループ直前の音が残って乗ってしまうというのとも違うようです。とにもかくにも、コレが絶対にこの設定で鳴らした時の音なのだという確証が持てなくなってしまいました。これでは到底製品に使用することはできません。

そこで急遽、Wave Arts Master Restoration Suite の Master Restoration(1つの画面にSuiteすべての機能がある)を使うことにしました。
すでにそれぞれのサンプルの音量などをどうするかという、大部分の作業は先程のワンノブのプラグインでやっていたので、プラグインを Master Restoration に挿し替えて、プラグインの初期設定に近い状態で使ってほぼ作業が完了できました。
Wave Arts を採用したのは、Power Suite ですでに安定した動作が期待できるプラグインを作る会社だという安心感があったからです。
実際、出音に関する問題、不安は完全に解消され、安心して PET Bottling のサンプルとして使うことができました。
PET Bottling ver 3で、アコースティックノイズをほぼ取り除いた24bitサンプルを、32bit floatで演算された音で演奏するという目標を達成できました。

ーー

その後今年に入り、ギターの音を Logic の Pedalboard や Amp Designer を使って演奏する作業を多くしました。
やはりこの時、小さなエレキギターの音をペダルやアンプで大胆に大きくすると同じ課題にぶつかりました。
これはウチの環境が悪いのですが、ギターシールドを通して Logic に入った音に僅かなエレクトリックノイズが乗っていて、Logic のプラグインはその音をより誇張してしまうようです。

すこで少し前に使用した、Wave Arts の Master Restoration を使いました。
これを Logic の Pedalboard や Amp Designer の前や後ろに挿しました。
そして探っていくと、常用できる設定を簡単に見つけることができました。

Noise セクションを Enable にし、Noise Floor の Learn ボタンを押すことで、現在のノイズを覚えさせます。そして Gate セクションを Enable にして、Preset から Mild Gate を選び、Threshold でノイズにしたい音量を設定します。
これで、ノイズにしたい音量の辺りで、期待したノイズリダクションができます。他のプラグインのように音の切れぎわで Gate が開いたり閉じたりして、聴き苦しい音になることが全くありません。
Look Ahead は 5ms で十分に短く、演奏にまったく支障がありません。最小2msまで設定できます。

他のプラグイン、例えば先程話題に出たワンノブで処理できるプラグインなど。後で分かったことですが、大抵のプラグインはリアルタイムで演奏時にかけるということを想定していません。録音した後の、後処理としてノイズを除去してやることのみに使われます。
Wave Arts の Master Restoration がリアルタイムにここまでノイズ除去できるのは特筆すべき特徴でしょう。

ーー

これで、Wave Arts の Master Restoration を使うことで、アコースティックノイズ、エレクトリックノイズともにうまくノイズを抑えるという課題を克服できることが分かりました。

先日 Wave Arts の製品はようやく Catalina 対応しました。これは Apple の強引なやり方のために各社対応が難しかったことが大きな要因です。今回からフレームワークをJUCEに変えることで、今後の安定したOS対応が期待できるとのことです。

また、多くのプラグインがそうであるように、Wave Arts の製品はぼくの嫌いな、プラグインのバージョンアップ時に内部IDを変えてしまうため、アップグレード時に前のバージョンを簡単に置き換えられません。残念ながら多くのプラグイン同様、このような仕様です。
この辺りも考えて、使う時は基本的にAutomationを書かずにプリセットを保存して呼び出したり、可能ならば使用箇所をバウンスすることで、後々のプロジェクトでの互換性をこちらで確保することになるでしょう。
Wave Arts Power Suite も上記理由から、当初 ver 5 から ver 6 にバージョンアップするのをやめて、今後は新しくなった Logic の Limiter の Mode を Precision、TruePeak Detection を ON にして対応しようとしましたが、どうやっても 0.0dB を超える可能性を除去できませんでした。
ですから、Wave Arts Power Suite も ver 6 にして、今後も Final Plug を使用することにしました。Release に Auto という優しい機能もありますし、Threshold と Ceiling を覚えておけばいいだけです。

ーー

ところで、先のワンノブでノイズ除去できるプラグインですが、結局 ver 4 を買いました。確かに後処理だけあって、より良くノイズを除去できることは確かですし、コレでOKとバウンスしてしまう時には使えそうですので。
そして、後にセールということもあって、リバーブを除去するプラグインなども一式購入しました。
ただ、今度はまたこのプラグインがすぐにアップデートするという…。当然買っても、自動で新しいバージョンに置き換わるわけでもなく、今度はさらに嫌いなサブスクリプションが標準だそうです。ま、買い切りもまだあるそうですが。
AI とか売りにしてたりするので、細かいバージョンで音違ったりしない?とか不安もあるし。
こちらはアップグレードして、積極的には使いたくないですわ。

ーー

ということで、ちょっと話は逸れましたが、Wave Arts Master Restoration Suite はオススメです。
あと、Wave Arts Power Suite もイイです。とくに Final Plug は今後も積極的に使っていくでしょう。

© 2009 Rootage Official Site